A&A ROBOT TECHNOLOGY COMPANY|JIG-SAW株式会社

NEWS

JIG-SAW、「生物・細胞」をソフトウェア制御する「再生医療」に着手 ~失明された方の“光の回復”を目指し、視覚再生用プリズムグラス開発および視細胞制御ソフトウェア組み込み~

2016年12月26日

 JIG-SAW株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:山川真考、東証マザーズ、以下JIG-SAW)と、モビコム株式会社(JIG-SAWおよびモビコム株式会社を含めて、以下当社グループ)は、全てのモノを対象にするIoT分野に加え、オプトジェネティクス(光遺伝学)を視覚へ応用し、「生物・細胞」をソフトウェアによって制御するプロジェクト(以下本プロジェクト)を正式に開始し、併せて関連技術の特許出願を完了したことを発表いたします。
 当社グループは2015年の初頭より、独自のDSP(デジタルシグナルプロセッサ)・通信制御・色信号制御技術を再生医療分野にも転用し、国立大学法人岩手大学 理工学部生命理工学科 冨田浩史教授(※1)・菅野江里子准教授ら(以下、冨田研究室)の視覚再生プロジェクトにおいて、「光を失った方(失明された方)に光を取り戻す(視覚再生)ための取り組み」を共同で進めてまいりました。

(※1)  冨田浩史教授 (医学博士)プロフィール
     岩手大学理工学部生命理工学科 教授
     東北大学病院 客員教授
     理化学研究所 適応知性チーム 客員研究員
    【受賞歴】
     ・Travel Grant Award, NIH supported travel grant(US), Retinal degeneration symposium,
      Bugenstock Switzerland(2002)
     ・Best Scientific Poster Award, Asia- Association for Research Vision
      and Ophthalmology(2009)
     ・文部科学大臣表彰 研究部門(失明者の視覚を回復するための遺伝子治療研究,2015)

 これは、同じく冨田研究室が開発し日米欧で特許登録され、既に前臨床段階にある網膜色素変性症(※2)に対する遺伝子治療薬をはじめとする網膜感度が低下した疾患に対する各種遺伝子治療薬の処方と合わせて対象者(患者)に提供する予定の「視覚再生用プリズムグラス」のアルゴリズムを実現するソフトウェアを開発し、コンピュータデータ通信による視細胞制御機能を提供することからスタートいたします。本プロジェクトでは「網膜の疾患によって失明された方が、屋内や暗所などのあらゆる場所において、ヒトの顔や表情や文字(読み書き)までも明確に識別できるレベルの視覚の再生を実現し適用していくこと」を具体的に実証していく予定です。

(※2) 網膜色素変性症:遺伝子異変に起因する網膜変性疾患で、主な症状としては進行性夜盲や視野狭窄、視力低下などが挙げられ、やがて色覚の喪失や失明に至る病気

【視覚再生への取り組み】

 現状では、一旦失明に至ると視覚機能を再建できる治療法はありませんが、冨田研究室が創出した遺伝子は可視光全域をカバーし、失明したラットの視覚機能を再建することに成功しており、既に前臨床試験が進められている段階です。当社グループと冨田研究室は、臨床試験開始までにソフトウェアによる視細胞制御技術の実用化と製品化を行います。
 尚、冨田研究室が初期に使用した遺伝子(ChR2:クラミドモナス由来チャネルロドプシン-2)は本年3月に米RetroSense Therapeutics(http://retrosense.com/index.html)がヒトへの投与を行う臨床試験を開始していますが、使用された遺伝子は青色領域のみの感受性を保有しており、回復される視覚機能は極めて限定的と予想されます。本プロジェクトで使用する遺伝子は先にも触れたように可視光全域に感受性を持っています。

 この遺伝子を用いた視覚再生研究は、Nature Groupの遺伝子治療雑誌およびその他の学術レビューなどで数多く報告されており、眼球に注射することで失明者の視覚を回復できる画期的治療法の一つとして全世界で注目・期待されていますが、併せてソフトウェアによる視細胞制御機能を搭載して網膜に映像を投影する視覚再生用プリズムグラスを開発・提供することにより、グラスを装着した患者は、生来の感覚と同等に近い視覚を再生する可能性が高まると想定しております。

【光を失った方(中途失明された方)に光を取り戻す(視覚再生)ための取り組み】

 当社グループは、コンピュータデータ通信の根源的な基礎技術である信号制御技術を高いレベルで保有していると同時に、豊富なキャリアグレード(※3)レベルでの通信モジュールの開発実績があります。

(※3) キャリアグレード:機器・ソフトウェア、システムの品質・信頼性の水準が、通信事業者が通信網に用いることのできる高い品質(性能・仕様)であるということ

 本プロジェクトは、保有する信号制御技術の中の「色信号制御技術」を適用しており、視覚再生のための視細胞制御の取組内容とノウハウについて特許出願した段階にあり、既に従来のシステムやマシンなど「無機物」とのデータのやり取りに加え、「生物・細胞」など「有機物」のソフトウェア制御の実証段階に入っています。具体的には「マウスによる実験」の段階を経て前臨床段階にありますが、これは細胞そのものへのダイレクトなソフトウェア信号通信により視細胞をコントロールし治療するもので、医療・創薬つまり「薬」の領域へ踏み込むことになります。

また当社の視細胞制御技術は、映像をリアルタイムで特定の色信号に変換し、光量調節までを行った上での視覚再生を可能とするため、今回の遺伝子治療に限定することなく、網膜感度が低下した他の疾患への幅広い応用まで可能性が高まります。

 今回の取り組みは、今までに網膜に何らかの損傷を受けたことによって完全に視覚喪失された方へ「視覚再生」をもたらすものであり、独自のソフトウェアによって生成されたアルゴリズムと色信号(データ)による視細胞制御のスタートになるものです。

 こうした取り組みは、世界中において中途失明された方々への「光の回復」を目指すものであり、コンピュータ・ソフトウェア技術が、モノ同士を繋いで効率化を進めるだけでなく、人類が切望する様々な根源的な課題を解決していくことを意味するもので、本プロジェクトはその画期的な第一歩となるものです。なお、当社グループの生物・細胞などのソフトウェアによる有機物制御技術は、今後他の取り組みにも展開を予定しております。

【我が国における網膜色素変性症等の実情と本プロジェクトの意義】

 人類は自らが入手する情報の80%以上を「眼:視覚」を通して得るとされていますが、我が国において、網膜色素変性症は中途失明原因の第3位であり、視力0.1以下の重度の視覚障害者に限定すれば、他の疾患をしのいで第1位になります。
 また網膜色素変性と同様に視細胞変性により失明を来たす加齢黄斑変性症は、欧米では中途失明原因の第1位であり、国内で70万人、世界では1億人以上と推定されており、先進諸国だけでも、このような網膜疾患による失明者は 2500万人以上と推定(※4)されています。

(※4)参考:
      国内 http://www.nanbyou.or.jp/entry/2434
      世界 http://jp.reuters.com/article/idJP00093500_20160426_00820160425
      先進国 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24665132

しかし現状ではその視覚機能を回復させる治療法はありません。本プロジェクトでは失明者の視覚機能自体の再建を目指し、眼内へのタンパク質成分薬の投与と同時に光感度の低さを大幅に回復させ高光度映像を網膜に投影する「ソフトウェア信号データによる視細胞制御」による視覚回復研究を継続して行ってまいります。

またこれらの研究を通じて、複雑な視覚情報処理システムの様々な役割も、取得する膨大なデータから明らかにしていく予定です。当社グループでは本プロジェクトを視覚再生分野において極めて貢献度が大きな取り組みだと捉えており、この研究の一部は岩手県「平成28年度地域イノベーション創出研究開発支援事業」の支援を受けて行われたことも付記させていただきます。

【本プロジェクトとiPS細胞との関係について】

 現在、iPS細胞から網膜色素上皮細胞を作製して移植する臨床研究が行われています。これは神経細胞の変性を抑制する、もしくは変性保護を目的とした研究であり、「失われた視覚を回復」させるものではありません。
iPS細胞を用いた視覚再生法は現在研究段階にあり、iPS細胞から作製された光受容細胞を網膜に移植して視覚を再生させるものです。生来の網膜には「青・緑・赤」それぞれの光を受容する細胞が存在していますが、iPS細胞から個々の細胞を作り出し、整然と配列し移植することは現状では困難であり、本プロジェクトにおいて開発している波長を変換し映像を提示する技術は、iPS細胞を用いた視覚再生研究においても利用用途が広がっていく可能性を想定しております。

【脳細胞など、その他の細胞に対する適用可能性について】

 網膜は脳と同じ中枢神経に分類され、網膜の視覚情報処理機構を理解すること自体が脳の情報処理機構の理解につながると予想されています。今回のような光活性化イオンチャネルは、視覚再生だけではなく、特定の脳神経細胞に導入し、光で特定の脳細胞を活性化する手法としても広く用いられており、この研究領域は光遺伝学「オプトジェネティクス」と呼ばれる新しい研究分野において、光による睡眠の誘導や記憶操作などの可能性を探査するものです。

(※ご参考)
冨田浩史教授(医学博士)
【経歴】
1992年 京都府立大学大学院農学研究科修士課程 修了
     参天製薬㈱ 入社 中央研究所配属
1998年 東北大学大学院医学系研究科 眼科学講座 助手
2002年 長寿科学振興財団海外派遣研究員
     オクラホマ大学Dean McGee Eye Institute眼科学講座
2004年 東北大学先進医工学研究機構 助教授
     生命機能科学分野 人工網膜研究チームリーダー
2008年 東北大学国際高等融合領域研究所 准教授
2012年 岩手大学理工学部生命理工学科 教授(現任)
     東北大学病院 客員教授(現任)
     理化学研究所 適応知性チーム 客員研究員(現任)

詳しくはこちらをご覧ください。

CONTACT

サービス導入に関するご相談やご不明な点などお気軽にご連絡下さい。